日記

太陽に炙られた街が夜を通して大気中に熱を返す。朝を迎える準備は時間の逆行にも似ている。深い夜更けに眠れない人々は孤独を知っている。或いは、知らざるを得ない。夜にしか見えないものがあるとしたら、それは孤独な魂の形かもしれない。

 

旅先ですれ違う山羊は祈りの花を食べる。山羊は山羊なりのやり方で祈りを地に還す。祈りを掬い上げるのは植物の為すところが大きく、人々はそれを手折るところから始める。自らの残酷さを忘れて祈りを捧げることは極めて難しい。

 

多重露光した写真には疲れ果てた犬と誰もいない砂漠の風景が重なる。真理は頭上で炸裂する火花のように掴み難い。魂の交感は瞬く間に過ぎ去る。都会の乾燥した神経の上を真理が滑って行く。