2020-01-01から1年間の記事一覧

日記

十月の寒さに言葉を尽くすのは難しい。冬が来れば十月に震えたことなどすぐ忘れてしまうだろう。しかし今の僕は咄嗟の寒さに晒されてあたたかい服がどうにも欲しいと思っている。悪夢を見ても死んでしまった人を思い出してもあたたかい服さえあれば安心して…

日記

短歌五首 偉大なる毛足の長き犬歩く 向こう岸から微笑みかけて 夜光る 街に馴染まぬ咆哮と 百日紅告ぐ 九月の組成 カーテンを透かす光で思い出す あなたの澄んだ魂の色 デパ地下のケーキコーナー眩しくて 眠れるように花買い帰る 眠り醒め オペラのような足…

日記

人々が寝静まった後になってようやく分かることがある。人は孤独でも幸福になることが出来る。昼の陽射しや喧騒の中では気付けない。勿論、昼日中にしか理解出来ないこともある。しかし、風の柔らかさとか月の輝きに支えられた真実というものが確かに存在す…

日記

眠る。哀悼と七月。 埃にまみれた鏡は宙に浮いて、我々の理解を要さない。鳥たちは見えない魚の銀の腹を狙って世界の総体を捉えようとする。世界の断片は宇宙単位で光り続けているものの誰の目にも止まらない。だがそれは不幸せとは離れたところにある。ただ…

日記

太陽に炙られた街が夜を通して大気中に熱を返す。朝を迎える準備は時間の逆行にも似ている。深い夜更けに眠れない人々は孤独を知っている。或いは、知らざるを得ない。夜にしか見えないものがあるとしたら、それは孤独な魂の形かもしれない。 旅先ですれ違う…

イルカと茄子

さっきまで眠気の尾をしっかり握っていたのにイルカと茄子の祖先のことを考えていたらいつの間にか手からすり抜けてしまった。 こうなったらまた眠気が訪れるまで何も考えずに待つのが一番良いのだけど時に諦めも肝要で、寝ることを諦めればこうして意味のな…